している。客は半分以上集まった。夫婦はなかへ這入《はい》って接待をせねばならん。
「そうさね。忘れていた」と男が云う。
「もうだいぶ御客さまがいらしったから、向《むこう》へ行かないじゃわるいでしょう」
「そうさね。もう行く方がいいだろう。しかし高柳がくると可哀想《かわいそう》だからね」
「ここにいらっしゃらないとですか」
「うん。あの男は、わたしが、ここに見えないと門まで来て引き返すよ」
「なぜ?」
「なぜって、こんな所へ来た事はないんだから――一人で一人坊《ひとりぼ》っちになる男なんだから――、ともかくもアーチを潜《くぐ》らせてしまわないと安心が出来ない」
「いらっしゃるんでしょうね」
「来るよ、わざわざ行って頼んだんだから、いやでも来ると約束すると来ずにいられない男だからきっとくるよ」
「御厭《おいや》なんですか」
「厭って、なに別に厭な事もないんだが、つまりきまりがわるいのさ」
「ホホホホ妙ですわね」
きまりのわるいのは自信がないからである。自信がないのは、人が馬鹿にすると思うからである。中野君はただきまりが悪いからだと云う。細君はただ妙ですわねと思う。この夫婦は自分達のきまり
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