。出るかと思うとやむ。やんだから仕事をしようかと思うとまた出る。高柳君は首を傾けた。
医者に行って見てもらおうかと思ったが、見てもらうと決心すれば、自分で自分を病気だと認定した事になる。自分で自分の病気を認定するのは、自分で自分の罪悪を認定するようなものである。自分の罪悪は判決を受けるまでは腹のなかで弁護するのが人情である。高柳君は自分の身体《からだ》を医師の宣告にかからぬ先に弁護した。神経であると弁護した。神経と事実とは兄弟であると云う事を高柳君は知らない。
夜になると時々寝汗《ねあせ》をかく。汗で眼がさめる事がある。真暗《まっくら》ななかで眼がさめる。この真暗さが永久続いてくれればいいと思う。夜があけて、人の声がして、世間が存在していると云う事がわかると苦痛である。
暗いなかをなお暗くするために眼を眠《ねむ》って、夜着《よぎ》のなかへ頭をつき込んで、もうこれぎり世の中へ顔が出したくない。このまま眠りに入って、眠りから醒《さ》めぬ間《ま》に、あの世に行ったら結構だろうと考えながら寝る。あくる日になると太陽は無慈悲にも赫奕《かくえき》として窓を照らしている。
時計を出しては一日
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