をして、苛《いじ》めて追い出してしまったんです」
「あの人を? ひどい事をするのね」
「それで高柳は今となって自分が生活に困難しているものだから、後悔して、さぞ先生も追い出されたために難義をしたろう、逢《あ》ったら謝罪するって云ってましたよ」
「全く追い出されたために、あんなに零落《れいらく》したんでしょうか。そうすると気の毒ね」
「それからせんだって江湖雑誌の記者と云う事が分ったでしょう。だから音楽会の帰りに教えてやったんです」
「高柳さんはいらしったでしょうか」
「行ったかも知れませんよ」
「追い出したんなら、本当に早く御詫《おわび》をなさる方がいいわね」
善人の会話はこれで一段落を告げる。
「どうです、あっちへ行って、少しみんなと遊《あす》ぼうじゃありませんか。いやですか」
「写真は御やめなの」
「あ、すっかり忘れていた。写真は是非取らして下さい。僕はこれでなかなか美術的な奴を取るんです。うん、商売人の取るのは下等ですよ。――写真も五六年この方《かた》大変進歩してね。今じゃ立派な美術です。普通の写真はだれが取ったって同じでしょう。近頃のは個人個人の趣味で調子がまるで違ってくるん
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