「世話をするって、ああ気六《きむ》ずかしくっちゃ、駄目ですよ。細君が可哀想《かわいそう》だ」
「でも。御持ちになったら癒《なお》るでしょう」
「少しは癒るかも知れないが、元来《がんらい》が性分《しょうぶん》なんですからね。悲観する癖があるんです。悲観病に罹《かか》ってるんです」
「ホホホホどうして、そんな病気が出たんでしょう」
「どうしてですかね。遺伝かも知れません。それでなければ小供のうち何かあったんでしょう」
「何か御聞《おきき》になった事はなくって」
「いいえ、僕ああまりそんな事を聞くのが嫌《きらい》だから、それに、あの男はいっこう何《なん》にも打ち明けない男でね。あれがもっと淡泊《たんぱく》に思った事を云う風だと慰めようもあるんだけれども」
「困っていらっしゃるんじゃなくって」
「生活にですか、ええ、そりゃ困ってるんです。しかし無暗《むやみ》に金をやろうなんていったら擲《たた》きつけますよ」
「だって御自分で御金がとれそうなものじゃありませんか、文学士だから」
「取れるですとも。だからもう少し待ってるといいですが、どうも性急《せっかち》で卒業したあくる日からして、立派な創作家
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