ら、どうか出来るだろうと思ってたのですが……」
「さよう、近頃のように卒業生が殖《ふ》えちゃ、ちょっと、口を得《う》るのが困難ですね。――どうです、田舎の学校へ行く気はないですか」
「時々は田舎へ行こうとも思うんですが……」
「またいやになるかね。――そうさ、あまり勧められもしない。私も田舎の学校はだいぶ経験があるが」
「先生は……」と言いかけたが、また昔の事を云い出しにくくなった。
「ええ?」と道也は何も知らぬ気《げ》である。
「先生は――あの――江湖雑誌《こうこざっし》を御編輯《ごへんしゅう》になると云う事ですが、本当にそうなんで」
「ええ、この間から引き受けてやっています」
「今月の論説に解脱《げだつ》と拘泥《こうでい》と云うのがありましたが、あの憂世子《ゆうせいし》と云うのは……」
「あれは、わたしです。読みましたか」
「ええ、大変面白く拝見しました。そう申しちゃ失礼ですが、あれは私の云いたい事を五六段高くして、表出《ひょうしゅつ》したようなもので、利益を享《う》けた上に痛快に感じました」
「それはありがたい。それじゃ君は僕の知己ですね。恐らく天下|唯一《ゆいいつ》の知己かも知
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