れない。ハハハハ」
「そんな事はないでしょう」と高柳君はやや真面目《まじめ》に云った。
「そうですか、それじゃなお結構だ。しかし今まで僕の文章を見てほめてくれたものは一人もない。君だけですよ」
「これから皆んな賞《ほ》めるつもりです」
「ハハハハそう云う人がせめて百人もいてくれると、わたしも本望《ほんもう》だが――随分|頓珍漢《とんちんかん》な事がありますよ。この間なんか妙な男が尋ねて来てね。……」
「何ですか」
「なあに商人ですがね。どこから聞いて来たか、わたしに、あなたは雑誌をやっておいでだそうだが文章を御書きなさるだろうと云うのです」
「へえ」
「書く事は書くとまあ云ったんです。するとねその男がどうぞ一つ、眼薬の広告をかいてもらいたいと云うんです」
「馬鹿な奴《やつ》ですね」
「その代り雑誌へ眼薬の広告を出すから是非一つ願いたいって――何でも点明水《てんめいすい》とか云う名ですがね……」
「妙な名をつけて――。御書きになったんですか」
「いえ、とうとう断わりましたがね。それでまだおかしい事があるのですよ。その薬屋で売出しの日に大きな風船を揚げるんだと云うのです」
「御祝いのためで
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