うに綺麗《きれい》な歯を露《あら》わした。子供の膝《ひざ》の傍《そば》には白だの赤だの藍《あい》だのの硝子玉《ガラスだま》がたくさんあった。主人は、
「とうとう雪子に負けた」と席を外《はず》して、宗助の方を向いたが、「どうですまた洞窟《とうくつ》へでも引き込みますかな」と云って立ち上がった。
 書斎の柱には、例のごとく錦の袋に入れた蒙古刀《もうことう》が振《ぶ》ら下《さ》がっていた。花活《はないけ》にはどこで咲いたか、もう黄色い菜の花が挿《さ》してあった。宗助は床柱の中途を華《はな》やかに彩《いろ》どる袋に眼を着けて、
「相変らず掛かっておりますな」と云った。そうして主人の気色《けしき》を頭の奥から窺《うかが》った。主人は、
「ええちと物数奇《ものずき》過ぎますね、蒙古刀は」と答えた。「ところが弟《おとと》の野郎そんな玩具《おもちゃ》を持って来ては、兄貴を籠絡《ろうらく》するつもりだから困りものじゃありませんか」
「御舎弟《ごしゃてい》はその後どうなさいました」と宗助は何気ない風を示した。
「ええようやく四五日前帰りました。ありゃ全く蒙古向ですね。御前のような夷狄《いてき》は東京にゃ調
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