夏目漱石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)宗助《そうすけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)存外|緊《しま》っていますからねと、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「金+饌のつくり」、第4水準2−91−37]
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        一

 宗助《そうすけ》は先刻《さっき》から縁側《えんがわ》へ坐蒲団《ざぶとん》を持ち出して、日当りの好さそうな所へ気楽に胡坐《あぐら》をかいて見たが、やがて手に持っている雑誌を放り出すと共に、ごろりと横になった。秋日和《あきびより》と名のつくほどの上天気なので、往来を行く人の下駄《げた》の響が、静かな町だけに、朗らかに聞えて来る。肱枕《ひじまくら》をして軒から上を見上げると、奇麗《きれい》な空が一面に蒼《あお》く澄んでいる。その空が自分の寝ている縁側の、窮屈な寸法に較《くら》べて見ると、非常に広大である。たまの日曜にこうして緩《ゆっ》くり空を見るだけでもだいぶ違うなと思いながら、眉《まゆ》
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