の頭を照らして、事なき光を西に落した。夜《よ》に入《い》って彼は、
「ちょっと坂井さんまで行って来る」と云い捨てて門を出た。月のない坂を上って、瓦斯灯《ガスとう》に照らされた砂利を鳴らしながら潜戸《くぐりど》を開けた時、彼は今夜ここで安井に落ち合うような万一はまず起らないだろうと度胸を据《す》えた。それでもわざと勝手口へ回って、御客来ですかと聞くことは忘れなかった。
「よくおいでです。どうも相変らず寒いじゃありませんか」と云う常の通り元気の好い主人を見ると、子供を大勢自分の前へ並べて、その中《うち》の一人と掛声をかけながら、じゃん拳《けん》をやっていた。相手の女の子の年は、六つばかりに見えた。赤い幅のあるリボンを蝶々《ちょうちょう》のように頭の上にくっつけて、主人に負けないほどの勢で、小さな手を握り固めてさっと前へ出した。その断然たる様子と、その握《にぎ》り拳《こぶし》の小ささと、これに反して主人の仰山《ぎょうさん》らしく大きな拳骨《げんこつ》が、対照になって皆《みんな》の笑を惹《ひ》いた。火鉢《ひばち》の傍《はた》に見ていた細君は、
「そら今度《こんだ》こそ雪子の勝だ」と云って愉快そ
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