方の所置をつけた方がまだ実際的かも知れない。緩《ゆっ》くり構えて、御米にでも知れるとまた心配が殖《ふ》えるだけだと思った。
「私のようなものにはとうてい悟《さとり》は開かれそうに有りません」と思いつめたように宜道を捕《つら》まえて云った。それは帰る二三日《にさんち》前の事であった。
「いえ信念さえあれば誰でも悟れます」と宜道は躊躇《ちゅうちょ》もなく答えた。「法華《ほっけ》の凝《こ》り固まりが夢中に太鼓を叩《たた》くようにやって御覧なさい。頭の巓辺《てっぺん》から足の爪先までがことごとく公案で充実したとき、俄然《がぜん》として新天地が現前するのでございます」
 宗助は自分の境遇やら性質が、それほど盲目的に猛烈な働《はたらき》をあえてするに適しない事を深く悲しんだ。いわんや自分のこの山で暮らすべき日はすでに限られていた。彼は直截《ちょくせつ》に生活の葛藤《かっとう》を切り払うつもりで、かえって迂濶《うかつ》に山の中へ迷い込んだ愚物《ぐぶつ》であった。
 彼は腹の中でこう考えながら、宜道の面前で、それだけの事を言い切る力がなかった。彼は心からこの若い禅僧の勇気と熱心と真面目《まじめ》と親切
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