くら考えてもこの最初の解決は確なものであると信じていた。ただ理窟《りくつ》から割り出したのだから、腹の足《たし》にはいっこうならなかった。彼はこの確なものを放り出して、さらにまた確なものを求めようとした。けれどもそんなものは少しも出て来なかった。
 彼は自分の室《へや》で独《ひと》り考えた。疲れると、台所から下りて、裏の菜園へ出た。そうして崖《がけ》の下に掘った横穴の中へ這入《はい》って、じっと動かずにいた。宜道は気が散るようでは駄目だと云った。だんだん集注して凝《こ》り固まって、しまいに鉄の棒のようにならなくては駄目だと云った。そう云う事を聞けば聞くほど、実際にそうなるのが、困難になった。
「すでに頭の中に、そうしようと云う下心があるからいけないのです」と宜道がまた云って聞かした。宗助はいよいよ窮した。忽然《こつぜん》安井の事を考え出した。安井がもし坂井の家へ頻繁《ひんぱん》に出入《でいり》でもするようになって、当分満洲へ帰らないとすれば、今のうちあの借家《しゃくや》を引き上げて、どこかへ転宅するのが上分別《じょうふんべつ》だろう。こんな所にぐずぐずしているより、早く東京へ帰ってその
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