たので、宗助は覚えずぎくりとした。室中に入って、その訴《うったえ》をなしたものは実に彼自身であった。
一時間の後宜道と宗助は袖《そで》をつらねてまた一窓庵に帰った。その帰り路に宜道は、
「ああして提唱のある時に、よく参禅者の不心得を諷《ふう》せられます」と云った。宗助は何も答えなかった。
二十一
そのうち、山の中の日は、一日一日と経《た》った。御米《およね》からはかなり長い手紙がもう二本来た。もっとも二本とも新たに宗助《そうすけ》の心を乱すような心配事は書いてなかった。宗助は常の細君思いに似ずついに返事を出すのを怠った。彼は山を出る前に、何とかこの間の問題に片をつけなければ、せっかく来た甲斐《かい》がないような、また宜道《ぎどう》に対してすまないような気がしていた。眼が覚《さ》めている時は、これがために名状しがたい一種の圧迫を受けつづけに受けた。したがって日が暮れて夜が明けて、寺で見る太陽の数が重なるにつけて、あたかも後から追いかけられでもするごとく気を焦《いら》った。けれども彼は最初の解決よりほかに、一歩もこの問題にちかづく術《すべ》を知らなかった。彼はまたい
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