ま》[#「態」は底本では「熊」]を見た。
この時堂上の僧は一斉《いっせい》に合掌《がっしょう》して、夢窓国師《むそうこくし》の遺誡《いかい》を誦《じゅ》し始めた。思い思いに席を取った宗助の前後にいる居士《こじ》も皆|同音《どうおん》に調子を合せた。聞いていると、経文のような、普通の言葉のような、一種の節を帯びた文字であった。
「我に三等の弟子あり。いわゆる猛烈にして諸縁《しょえん》を放下《ほうげ》し、専一に己事《こじ》を究明するこれを上等と名づく。修業純ならず駁雑《はくざつ》学を好む、これを中等と云う」と云々という、余り長くはないものであった。宗助は始め夢窓国師《むそうこくし》の何人《なんびと》なるかを知らなかった。宜道からこの夢窓国師と大燈国師《だいとうこくし》とは、禅門中興の祖であると云う事を教わったのである。平生|跛《ちんば》で充分に足を組む事ができないのを憤《いきどお》って、死ぬ間際《まぎわ》に、今日《きょう》こそおれの意のごとくにして見せると云いながら、悪い方の足を無理に折っぺしょって、結跏《けっか》したため、血が流れて法衣《ころも》を煮染《にじ》ましたという大燈国師の話も
前へ
次へ
全332ページ中310ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング