れ》しさの余り、裏の山へ馳《か》け上って、草木国土《そうもくこくど》悉皆成仏《しっかいじょうぶつ》と大きな声を出して叫んだ。そうしてついに頭を剃《そ》ってしまった。
この庵を預かるようになってから、もう二年になるが、まだ本式に床を延べて、楽に足を延ばして寝た事はないと云った。冬でも着物のまま壁に倚《もた》れて坐睡《ざすい》するだけだと云った。侍者《じしゃ》をしていた頃などは、老師の犢鼻褌《ふんどし》まで洗わせられたと云った。その上少しの暇を偸《ぬす》んで坐りでもすると、後《うしろ》から来て意地の悪い邪魔をされる、毒吐《どくづ》かれる、頭の剃り立てには何の因果《いんが》で坊主になったかと悔む事が多かったと云った。
「ようやくこの頃になって少し楽になりました。しかしまだ先がございます。修業は実際苦しいものです。そう容易にできるものなら、いくら私共が馬鹿だって、こうして十年も二十年も苦しむ訳がございません」
宗助はただ惘然《ぼうぜん》とした。自己の根気と精力の足らない事をはがゆく思う上に、それほど歳月を掛けなければ成就《じょうじゅ》できないものなら、自分は何しにこの山の中までやって来たか
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