《いどばた》の方へ出た。そうして冷たい水を汲《く》んでできるだけ早く顔を洗った。延びかかった髯《ひげ》が、頬の辺《あたり》で手を刺すようにざらざらしたが、今の宗助にはそれを苦にするほどの余裕はなかった。彼はしきりに宜道と自分とを対照して考えた。
 紹介状を貰うときに東京で聞いたところによると、この宜道という坊さんは、大変|性質《たち》のいい男で、今では修業もだいぶでき上がっていると云う話だったが、会って見ると、まるで一丁字《いっていじ》もない小廝《こもの》のように丁寧《ていねい》であった。こうして襷掛《たすきがけ》で働いているところを見ると、どうしても一個の独立した庵《あん》の主人らしくはなかった。納所《なっしょ》とも小坊主とも云えた。
 この矮小《わいしょう》な若僧《じゃくそう》は、まだ出家をしない前、ただの俗人としてここへ修業に来た時、七日の間|結跏《けっか》したぎり少しも動かなかったのである。しまいには足が痛んで腰が立たなくなって、厠《かわや》へ上《のぼ》る折などは、やっとの事壁伝いに身体《からだ》を運んだのである。その時分の彼は彫刻家であった。見性《けんしょう》した日に、嬉《う
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