間際《まぎわ》に、おや悟ったなと喜ぶことがあるが、さていよいよ眼を開《あ》いて見ると、やっぱり元の通の自分なので失望するばかりだと云って、宗助を笑わした。こう云う気楽な考で、参禅している人もあると思うと、宗助も多少は寛《くつ》ろいだ。けれども三人が分れ分れに自分の室《へや》に入る時、宜道が、
「今夜は御誘い申しますから、これから夕方までしっかり御坐りなさいまし」と真面目《まじめ》に勧《すす》めたとき、宗助はまた一種の責任を感じた。消化《こな》れない堅い団子が胃に滞《とどこ》おっているような不安な胸を抱《いだ》いて、わが室へ帰って来た。そうしてまた線香を焚《た》いて坐わり出した。その癖《くせ》夕方までは坐り続けられなかった。どんな解答にしろ一つ拵《こし》らえておかなければならないと思いながらも、しまいには根気が尽きて、早く宜道が夕食《ゆうめし》の報知《しらせ》に本堂を通り抜けて来てくれれば好いと、そればかり気にかかった。
 日は懊悩《おうのう》と困憊《こんぱい》の裡《うち》に傾むいた。障子《しょうじ》に映る時の影がしだいに遠くへ立ち退《の》くにつれて、寺の空気が床《ゆか》の下から冷え出し
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