ちに、はや三尺余りの長さになったので、そこで筆を擱《お》いたが、公案に苦しめられている事や、坐禅をして膝《ひざ》の関節を痛くしている事や、考えるためにますます神経衰弱が劇《はげ》しくなりそうな事は、噫《おくび》にも出さなかった。彼はこの手紙に切手を貼《は》って、ポストに入れなければならない口実を求めて、早速山を下った。そうして父母未生以前と、御米と、安井に、脅《おびや》かされながら、村の中をうろついて帰った。
 午《ひる》には、宜道から話のあった居士《こじ》に会った。この居士は茶碗を出して、宜道に飯を盛《よそ》って貰《もら》うとき、憚《はば》かり様とも何とも云わずに、ただ合掌《がっしょう》して礼を述べたり、相図をしたりした。このくらい静かに物事を為《す》るのが法だとか云った。口を利《き》かず、音を立てないのは、考えの邪魔になると云う精神からだそうであった。それほど真剣にやるべきものをと、宗助は昨夜からの自分が、何となく恥ずかしく思われた。
 食後三人は囲炉裏の傍《はた》でしばらく話した。その時居士は、自分が坐禅をしながら、いつか気がつかずにうとうとと眠ってしまっていて、はっと正気に帰る
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