らすより、いっそその道の書物でも借りて読む方が、要領を得る捷径《ちかみち》ではなかろうかと思いついた。宜道にそう云うと、宜道は一も二もなく宗助の考を排斥した。
「書物を読むのはごく悪うございます。有体《ありてい》に云うと、読書ほど修業の妨《さまたげ》になるものは無いようです。私共でも、こうして碧巌などを読みますが、自分の程度以上のところになると、まるで見当《けんとう》がつきません。それを好加減《いいかげん》に揣摩《しま》する癖がつくと、それが坐る時の妨になって、自分以上の境界《きょうがい》を予期して見たり、悟を待ち受けて見たり、充分突込んで行くべきところに頓挫《とんざ》ができます。大変毒になりますから、御止しになった方がよいでしょう。もし強《し》いて何か御読みになりたければ、禅関策進《ぜんかんさくしん》というような、人の勇気を鼓舞《こぶ》したり激励したりするものが宜《よろ》しゅうございましょう。それだって、ただ刺戟《しげき》の方便として読むだけで、道その物とは無関係です」
 宗助には宜道の意味がよく解らなかった。彼はこの生若《なまわか》い青い頭をした坊さんの前に立って、あたかも一個の低
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