に曲って来た。宗助は両手で左の足の甲を抱《かか》えるようにして下へおろした。彼は何をする目的《めあて》もなく室《へや》の中に立ち上がった。障子《しょうじ》を明けて表へ出て、門前をぐるぐる駈《か》け回《まわ》って歩きたくなった。夜はしんとしていた。寝ている人も起きている人もどこにもおりそうには思えなかった。宗助は外へ出る勇気を失った。じっと生きながら妄想《もうぞう》に苦しめられるのはなお恐ろしかった。
彼は思い切ってまた新らしい線香を立てた。そうしてまたほぼ前《ぜん》と同じ過程を繰り返した。最後に、もし考えるのが目的だとすれば、坐って考えるのも寝て考えるのも同じだろうと分別した。彼は室の隅《すみ》に畳んであった薄汚ない蒲団《ふとん》を敷いて、その中に潜《もぐ》り込んだ。すると先刻《さっき》からの疲れで、何を考える暇もないうちに、深い眠りに落ちてしまった。
眼が覚《さ》めると枕元の障子がいつの間にか明るくなって、白い紙にやがて日の逼《せま》るべき色が動いた。昼も留守《るす》を置かずに済む山寺は、夜に入っても戸を閉《た》てる音を聞かなかったのである。宗助は自分が坂井の崖下《がけした》の暗
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