禅をした結果そういう気楽な心になれるのか迷った。
「気楽ではいけません。道楽にできるものなら、二十年も三十年も雲水《うんすい》をして苦しむものはありません」と宜道は云った。
彼は坐禅をするときの一般の心得や、老師《ろうし》から公案《こうあん》の出る事や、その公案に一生懸命|噛《かじ》りついて、朝も晩も昼も夜も噛りつづけに噛らなくてはいけない事やら、すべて今の宗助には心元なく見える助言《じょごん》を与えた末、
「御室《おへや》へ御案内しましょう」と云って立ち上がった。
囲炉裏《いろり》の切ってある所を出て、本堂を横に抜けて、その外《はず》れにある六畳の座敷の障子《しょうじ》を縁から開けて、中へ案内された時、宗助は始めて一人遠くに来た心持がした。けれども頭の中は、周囲の幽静な趣《おもむき》と反照《はんしょう》するためか、かえって町にいるときよりも動揺した。
約一時間もしたと思う頃宜道の足音がまた本堂の方から響いた。
「老師《ろうし》が相見《しょうけん》になるそうでございますから、御都合が宜《よろ》しければ参りましょう」と云って、丁寧《ていねい》に敷居の上に膝《ひざ》を突いた。
二人
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