の方へ引返した。すると石段の下から剃立《そりたて》の頭を青く光らした坊さんが上って来た。年はまだ二十四五としか見えない若い色白の顔であった。宗助は門の扉の所に待ち合わして、
「宜道さんとおっしゃる方はこちらにおいででしょうか」と聞いた。
「私が宜道です」と若い僧は答えた。宗助は少し驚ろいたが、また嬉《うれ》しくもあった。すぐ懐中から例の紹介状を出して渡すと、宜道は立ちながら封を切って、その場で読み下《くだ》した。やがて手紙を巻き返して封筒へ入れると、
「ようこそ」と云って、叮嚀《ていねい》に会釈《えしゃく》したなり、先に立って宗助を導いた。二人は庫裡に下駄《げた》を脱いで、障子を開けて内へ這入った。そこには大きな囲炉裏《いろり》が切ってあった。宜道は鼠木綿《ねずみもめん》の上に羽織《はお》っていた薄い粗末な法衣《ころも》を脱いで釘《くぎ》にかけて、
「御寒うございましょう」と云って、囲炉裏の中に深く埋《い》けてあった炭を灰の下から掘り出した。
この僧は若いに似合わずはなはだ落ちついた話振《はなしぶり》をする男であった。低い声で何か受答えをした後《あと》で、にやりと笑う具合などは、まる
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