満洲へ駆《か》りやった罪に対して、いかに悔恨の苦しみを重ねても、どうする事もできない地位に立っていたからである。
「御米、御前信仰の心が起った事があるかい」と或時宗助が御米に聞いた。御米は、ただ、
「あるわ」と答えただけで、すぐ「あなたは」と聞き返した。
宗助は薄笑いをしたぎり、何とも答えなかった。その代り推《お》して、御米の信仰について、詳しい質問も掛けなかった。御米には、それが仕合《しあわ》せかも知れなかった。彼女はその方面に、これというほど判然《はっきり》した凝《こ》り整った何物も有《も》っていなかったからである。二人はとかくして会堂の腰掛《ベンチ》にも倚《よ》らず、寺院の門も潜《くぐ》らずに過ぎた。そうしてただ自然の恵から来る月日《つきひ》と云う緩和剤《かんわざい》の力だけで、ようやく落ちついた。時々遠くから不意に現れる訴《うったえ》も、苦しみとか恐れとかいう残酷の名を付けるには、あまり微《かす》かに、あまり薄く、あまりに肉体と慾得を離れ過ぎるようになった。必竟《ひっきょう》ずるに、彼らの信仰は、神を得なかったため、仏《ほとけ》に逢わなかったため、互を目標《めじるし》として働
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