った時、二人は安井もまた半途で学校を退《しりぞ》いたという消息を耳にした。彼らは固《もと》より安井の前途を傷《きずつ》けた原因をなしたに違なかった。次に安井が郷里に帰ったという噂《うわさ》を聞いた。次に病気に罹《かか》って家に寝ているという報知《しらせ》を得た。二人はそれを聞くたびに重い胸を痛めた。最後に安井が満洲に行ったと云う音信《たより》が来た。宗助は腹の中で、病気はもう癒《なお》ったのだろうかと思った。または満洲行の方が嘘《うそ》ではなかろうかと考えた。安井は身体《からだ》から云っても、性質から云っても、満洲や台湾に向く男ではなかったからである。宗助はできるだけ手を回して、事の真疑を探った。そうして、或る関係から、安井がたしかに奉天にいる事を確め得た。同時に彼の健康で、活溌《かっぱつ》で、多忙である事も確め得た。その時夫婦は顔を見合せて、ほっという息を吐《つ》いた。
「まあよかろう」と宗助が云った。
「病気よりはね」と御米が云った。
 二人はそれから以後安井の名を口にするのを避けた。考え出す事さえもあえてしなかった。彼らは安井を半途で退学させ、郷里へ帰らせ、病気に罹らせ、もしくは
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