した。蒙古刀《もうことう》だそうです」と云いながら、すぐ抜いて見せた。後《うしろ》に差してあった象牙《ぞうげ》のような棒も二本抜いて見せた。
「こりゃ箸《はし》ですよ。蒙古人は始終《しじゅう》これを腰へぶら下げていて、いざ御馳走《ごちそう》という段になると、この刀を抜いて肉を切って、そうしてこの箸で傍《そば》から食うんだそうです」
 主人はことさらに刀と箸を両手に持って、切ったり食ったりする真似をして見せた。宗助はひたすらにその精巧な作りを眺《なが》めた。
「まだ蒙古人の天幕《テント》に使うフェルトも貰いましたが、まあ昔の毛氈《もうせん》と変ったところもありませんね」
 主人は蒙古人の上手に馬を扱う事や、蒙古犬の瘠《や》せて細長くて、西洋のグレー・ハウンドに似ている事や、彼らが支那人のためにだんだん押し狭《せば》められて行く事や、――すべて近頃あっちから帰ったという弟に聞いたままを宗助に話した。宗助はまた自分のいまだかつて耳にした事のない話だけに、一々少なからぬ興味を有《も》ってそれを聞いて行った。そのうちに、元来この弟は蒙古で何をしているのだろうという好奇心が出た。そこでちょっと主人
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