を御米の前に置いて、
「姉さんに上げましょう」と云った。それから鈴を着けた、梅の花の形に縫った御手玉を宗助の前に置いて、
「坂井の御嬢さんにでも御上げなさい」と云った。
 事に乏しい一小家族の大晦日《おおみそか》は、それで終りを告げた。

        十六

 正月は二日目の雪を率《ひきい》て注連飾《しめかざり》の都を白くした。降りやんだ屋根の色がもとに復《かえ》る前、夫婦は亜鉛張《トタンばり》の庇《ひさし》を滑《すべ》り落ちる雪の音に幾遍か驚ろかされた。夜半《よなか》にはどさと云う響がことにはなはだしかった。小路《こうじ》の泥濘《ぬかるみ》は雨上りと違って一日《いちんち》や二日《ふつか》では容易に乾かなかった。外から靴を汚《よご》して帰って来る宗助《そうすけ》が、御米《およね》の顔を見るたびに、
「こりゃいけない」と云いながら玄関へ上った。その様子があたかも御米を路を悪くした責任者と見傚《みな》している風に受取られるので、御米はしまいに、
「どうも済みません。本当に御気の毒さま」と云って笑い出した。宗助は別に返すべき冗談《じょうだん》も有《も》たなかった。
「御米ここから出かける
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