は湯の戻りに髪結《かみゆい》の所へ回って頭を拵《こしら》えるはずだそうであった。閑静な宗助の活計《くらし》も、大晦日《おおみそか》にはそれ相応《そうおう》の事件が寄せて来た。
「払《はらい》はもう皆《みんな》済んだのかい」と宗助は立ちながら御米に聞いた。御米はまだ薪屋《まきや》が一軒残っていると答えた。
「来たら払ってちょうだい」と云って懐《ふところ》の中から汚《よご》れた男持の紙入と、銀貨入の蟇口《がまぐち》を出して、宗助に渡した。
「小六はどうした」と夫はそれを受取ながら云った。
「先刻《さっき》大晦日の夜の景色《けしき》を見て来るって出て行ったのよ。随分御苦労さまね。この寒いのに」と云う御米の後《あと》に追《つ》いて、清は大きな声を出して笑った。やがて、
「御若いから」と評しながら、勝手口へ行って、御米の下駄《げた》を揃《そろ》えた。
「どこの夜景を見る気なんだ」
「銀座から日本橋通のだって」
 御米はその時もう框《かまち》から下《お》りかけていた。すぐ腰障子《こししょうじ》を開ける音がした。宗助はその音を聞き送って、たった一人|火鉢《ひばち》の前に坐って、灰になる炭の色を眺《な
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