傍《そば》に譲葉《ゆずりは》と裏白《うらじろ》と半紙と鋏《はさみ》が置いてあった。若い下女が細君の前に坐って、釣銭らしい札《さつ》と銀貨を畳に並べていた。主人は宗助を見て、
「いやどうも」と云った。「押しつまってさぞ御忙《おいそが》しいでしょう。この通りごたごたです。さあどうぞこちらへ。何ですな、御互に正月にはもう飽《あ》きましたな。いくら面白いものでも四十|辺《ぺん》以上繰り返すと厭《いや》になりますね」
主人は年の送迎に煩《わず》らわしいような事を云ったが、その態度にはどこと指してくさくさしたところは認められなかった。言葉遣《ことばづかい》は活溌《かっぱつ》であった。顔はつやつやしていた。晩食《ばんしょく》に傾けた酒の勢《いきおい》が、まだ頬の上に差しているごとく思われた。宗助は貰い煙草《たばこ》をして二三十分ばかり話して帰った。
家《うち》では御米が清を連れて湯に行くとか云って、石鹸入《シャボンいれ》を手拭《てぬぐい》に包《くる》んで、留守居を頼む夫の帰《かえり》を待ち受けていた。
「どうなすったの、随分長かったわね」と云って時計を眺めた。時計はもう十時近くであった。その上清
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