眼に着いた。時々はそれを一枚ずつ順に読み直したり、見直したりした。しまいにもうすっかり癒《なお》ったから帰る。しかしせっかくここまで来ながら、ここで君の顔を見ないのは遺憾《いかん》だから、この手紙が着きしだい、ちょっとでいいから来いという端書が来た。無事と退屈を忌《い》む宗助を動かすには、この十数言《じゅうすうげん》で充分であった。宗助は汽車を利用してその夜のうちに安井の宿に着いた。
明るい灯火《ともしび》の下に三人が待設けた顔を合わした時、宗助は何よりもまず病人の色沢《いろつや》の回復して来た事に気がついた。立つ前よりもかえって好いくらいに見えた。安井自身もそんな心持がすると云って、わざわざ襯衣《シャツ》の袖《そで》を捲《まく》り上げて、青筋の入った腕を独《ひとり》で撫《な》でていた。御米も嬉《うれ》しそうに眼を輝かした。宗助にはその活溌《かっぱつ》な目遣《めづかい》がことに珍らしく受取れた。今まで宗助の心に映じた御米は、色と音の撩乱《りょうらん》する裏《なか》に立ってさえ、極《きわ》めて落ちついていた。そうしてその落ちつきの大部分はやたらに動かさない眼の働らきから来たとしか思われ
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