。三返に一返ぐらい、顔を見せないで、始ての時のように、ひっそり隣りの室《へや》に忍んでいる事もあった。宗助は別にそれを気にも留めなかった。それにもかかわらず、二人はようやく接近した。幾何《いくばく》ならずして冗談《じょうだん》を云うほどの親《したし》みができた。
 そのうちまた秋が来た。去年と同じ事情の下《もと》に、京都の秋を繰り返す興味に乏しかった宗助は、安井と御米に誘われて茸狩《たけがり》に行った時、朗らかな空気のうちにまた新らしい香《におい》を見出した。紅葉《もみじ》も三人で観た。嵯峨《さが》から山を抜けて高雄《たかお》へ歩く途中で、御米は着物の裾《すそ》を捲《ま》くって、長襦袢《ながじゅばん》だけを足袋《たび》の上まで牽《ひ》いて、細い傘《かさ》を杖《つえ》にした。山の上から一町も下に見える流れに日が射して、水の底が明らかに遠くから透《す》かされた時、御米は
「京都は好い所ね」と云って二人を顧《かえり》みた。それをいっしょに眺めた宗助にも、京都は全く好い所のように思われた。
 こう揃《そろ》って外へ出た事も珍らしくはなかった。家《うち》の中で顔を合わせる事はなおしばしばあった。
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