御米の口調《くちょう》のどこにも、国訛《くになまり》らしい音《おん》の交《まじ》っていない事に気がついた。
「今まで御国の方に」と聞いたら、御米が返事をする前に安井が、
「いや横浜に長く」と答えた。
その日は二人して町へ買物に出ようと云うので、御米は不断着《ふだんぎ》を脱ぎ更えて、暑いところをわざわざ新らしい白足袋《しろたび》まで穿《は》いたものと知れた。宗助はせっかくの出がけを喰い留めて、邪魔でもしたように気の毒な思をした。
「なに宅《うち》を持ち立てだものだから、毎日毎日|要《い》るものを新らしく発見するんで、一週に一二返は是非都まで買い出しに行かなければならない」と云いながら安井は笑った。
「途《みち》までいっしょに出掛けよう」と宗助はすぐ立ち上がった。ついでに家《うち》の様子を見てくれと安井の云うに任せた。宗助は次の間にある亜鉛《トタン》の落しのついた四角な火鉢《ひばち》や、黄な安っぽい色をした真鍮《しんちゅう》の薬鑵《やかん》や、古びた流しの傍《そば》に置かれた新らし過ぎる手桶《ておけ》を眺めて、門《かど》へ出た。安井は門口《かどぐち》へ錠《じょう》をおろして、鍵《かぎ》を
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