うに、けっして自分の前に出て来る気遣《きづかい》はあるまいと信じていた。
この予期の下《もと》に、宗助は突然御米に紹介されたのである。その時御米はこの間のように粗《あら》い浴衣《ゆかた》を着てはいなかった。これからよそへ行くか、または今外から帰って来たと云う風な粧《よそおい》をして、次の間から出て来た。宗助にはそれが意外であった。しかし大した綺羅《きら》を着飾った訳でもないので、衣服の色も、帯の光も、それほど彼を驚かすまでには至らなかった。その上御米は若い女にありがちの嬌羞《きょうしゅう》というものを、初対面の宗助に向って、あまり多く表わさなかった。ただ普通の人間を静にして言葉|寡《すく》なに切りつめただけに見えた。人の前へ出ても、隣の室《へや》に忍んでいる時と、あまり区別のないほど落ちついた女だという事を見出した宗助は、それから推して、御米のひっそりしていたのは、穴勝《あながち》恥かしがって、人の前へ出るのを避けるためばかりでもなかったんだと思った。
安井は御米を紹介する時、
「これは僕の妹《いもと》だ」という言葉を用いた。宗助は四五分対坐して、少し談話を取り換わしているうちに、
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