いっしょに帰るつもりでいたが、少し事情があって先へ立たなければならない事になったからと云う断《ことわり》を述べた末に、いずれ京都で緩《ゆっ》くり会おうと書いてあった。宗助はそれを洋服の内懐《うちぶところ》に押し込んで汽車に乗った。約束の興津《おきつ》へ来たとき彼は一人でプラットフォームへ降りて、細長い一筋町を清見寺《せいけんじ》の方へ歩いた。夏もすでに過ぎた九月の初なので、おおかたの避暑客は早く引き上げた後だから、宿屋は比較的閑静であった。宗助は海の見える一室の中に腹這《はらばい》になって、安井へ送る絵端書《えはがき》へ二三行の文句を書いた。そのなかに、君が来ないから僕一人でここへ来たという言葉を入れた。
翌日も約束通り一人で三保《みほ》と竜華寺《りゅうげじ》を見物して、京都へ行ってから安井に話す材料をできるだけ拵《こしら》えた。しかし天気のせいか、当《あて》にした連《つれ》のないためか、海を見ても、山へ登っても、それほど面白くなかった。宿にじっとしているのは、なお退屈であった。宗助は匆々《そうそう》にまた宿の浴衣《ゆかた》を脱《ぬ》ぎ棄《す》てて、絞《しぼ》りの三尺と共に欄干《らん
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