いたが、だんだん時日が逼《せま》るに従って、安井の消息が気になってきた。安井はその後一枚の端書《はがき》さえ寄こさなかったのである。宗助は安井の郷里の福井へ向けて手紙を出して見た。けれども返事はついに来なかった。宗助は横浜の方へ問い合わせて見ようと思ったが、つい番地も町名も聞いて置かなかったので、どうする事もできなかった。
立つ前の晩に、父は宗助を呼んで、宗助の請求通り、普通の旅費以外に、途中で二三日滞在した上、京都へ着いてからの当分の小遣《こづかい》を渡して、
「なるたけ節倹《せっけん》しなくちゃいけない」と諭《さと》した。
宗助はそれを、普通の子が普通の親の訓戒を聞く時のごとくに聞いた。父はまた、
「来年また帰って来るまでは会わないから、随分気をつけて」と云った。その帰って来る時節には、宗助はもう帰れなくなっていたのである。そうして帰って来た時は、父の亡骸《なきがら》がもう冷たくなっていたのである。宗助は今に至るまでその時の父の面影《おもかげ》を思い浮べてはすまないような気がした。
いよいよ立つと云う間際《まぎわ》に、宗助は安井から一通の封書を受取った。開いて見ると、約束通り
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