の》きながら跪《ひざま》ずいた。同時にこの復讐を受けるために得た互の幸福に対して、愛の神に一弁《いちべん》の香《こう》を焚《た》く事を忘れなかった。彼らは鞭《むちう》たれつつ死に赴くものであった。ただその鞭の先に、すべてを癒《い》やす甘い蜜の着いている事を覚《さと》ったのである。
宗助は相当に資産のある東京ものの子弟として、彼らに共通な派出《はで》な嗜好《しこう》を、学生時代には遠慮なく充《み》たした男である。彼はその時|服装《なり》にも、動作にも、思想にも、ことごとく当世らしい才人の面影《おもかげ》を漲《みなぎ》らして、昂《たか》い首を世間に擡《もた》げつつ、行こうと思う辺《あた》りを濶歩《かっぽ》した。彼の襟《えり》の白かったごとく、彼の洋袴《ズボン》の裾《すそ》が奇麗《きれい》に折り返されていたごとく、その下から見える彼の靴足袋《くつたび》が模様入のカシミヤであったごとく、彼の頭は華奢《きゃしゃ》な世間向きであった。
彼は生れつき理解の好い男であった。したがって大した勉強をする気にはなれなかった。学問は社会へ出るための方便と心得ていたから、社会を一歩|退《しり》ぞかなくっては
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