離れる事ができなくなったと評する方が適当であった。
 彼らはこの抱合《ほうごう》の中《うち》に、尋常の夫婦に見出しがたい親和と飽満《ほうまん》と、それに伴なう倦怠《けんたい》とを兼ね具えていた。そうしてその倦怠の慵《ものう》い気分に支配されながら、自己を幸福と評価する事だけは忘れなかった。倦怠は彼らの意識に眠のような幕を掛けて、二人の愛をうっとり霞《かす》ます事はあった。けれども簓《ささら》で神経を洗われる不安はけっして起し得なかった。要するに彼らは世間に疎《うと》いだけそれだけ仲の好い夫婦であったのである。
 彼らは人並以上に睦《むつ》ましい月日を渝《かわ》らずに今日《きょう》から明日《あす》へと繋《つな》いで行きながら、常はそこに気がつかずに顔を見合わせているようなものの、時々自分達の睦まじがる心を、自分で確《しか》と認める事があった。その場合には必ず今まで睦まじく過ごした長の歳月《としつき》を溯《さか》のぼって、自分達がいかな犠牲を払って、結婚をあえてしたかと云う当時を憶い出さない訳には行かなかった。彼らは自然が彼らの前にもたらした恐るべき復讐《ふくしゅう》の下《もと》に戦《おの
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