女を向うへ廻した津田は、必ず積極的に作用した。それも十が十まで楽々とできた。
二人取り残された時の彼は、取り残された後で始めてこの特色に気がついた。気がつくと昔の女に対する過去の記憶がいつの間《ま》にか蘇生していた。今まで彼の予想しつつあった手持無沙汰《てもちぶさた》の感じが、ちょうどその手持無沙汰の起らなければならないと云う間際へ来て、不思議にも急に消えた。彼は伸《の》び伸びした心持で清子の前に坐っていた。そうしてそれは彼が彼女の前で、事件の起らない過去に経験したものと大して変っていなかった。少くとも同じ性質のものに違《ちがい》ないという自覚が彼の胸のうちに起った。したがって談話の途切れた時積極的に動き始めたものは、昔の通り彼であった。しかも昔《むか》しの通りな気分で動けるという事自身が、彼には思いがけない満足になった。
「関君はどうしました。相変らず御勉強ですか。その後|御無沙汰《ごぶさた》をしていっこうお目にかかりませんが」
津田は何の気もつかなかった。会話の皮切《かわきり》に清子の夫を問題にする事の可否は、利害関係から見ても、今日《こんにち》まで自分ら二人の間に起った感情の
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