受ける生理作用の結果とも解釈された。山を眺めた津田の眼が、端《はし》なく上気した時のように紅く染った清子の耳朶《みみたぶ》に落ちた時、彼は腹のうちでそう考えた。彼女の耳朶は薄かった。そうして位置の関係から、肉の裏側に差し込んだ日光が、そこに寄った彼女の血潮を通過して、始めて津田の眼に映ってくるように思われた。

        百八十五

 こんな場合にどっちが先へ口を利《き》き出すだろうか、もし相手がお延だとすると、事実は考えるまでもなく明暸《めいりょう》であった。彼女は津田に一寸《いっすん》の余裕も与えない女であった。その代り自分にも五分《ごぶ》の寛《くつろ》ぎさえ残しておく事のできない性質《たち》に生れついていた。彼女はただ随時随所に精一杯の作用をほしいままにするだけであった。勢い津田は始終《しじゅう》受身の働きを余儀なくされた。そうして彼女に応戦すべく緊張の苦痛と努力の窮屈さを甞《な》めなければならなかった。
 ところが清子を前へ据《す》えると、そこに全く別種の趣《おもむき》が出て来た。段取は急に逆になった。相撲《すもう》で云えば、彼女はいつでも津田の声を受けて立った。だから彼
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