》を外《はず》しただけではなかった。彼女は先刻《さっき》津田が吉川夫人の名前で贈りものにした大きな果物籃《くだものかご》を両手でぶら提《さ》げたまま、縁側の隅から出て来たのである。どういうつもりか、今までそれを荷厄介《にやっかい》にしているという事自身が、津田に対しての冷淡さを示す度盛《どもり》にならないのは明かであった。それからその重い物を今まで縁側の隅で持っていたとすれば無論、いったん下へ置いてさらに取り上げたと解釈しても、彼女の所作は変に違《ちがい》なかった。少くとも不器用であった。何だか子供染《こどもじ》みていた。しかし彼女の平生をよく知っている津田は、そこにいかにも清子らしい或物を認めざるを得なかった。
「滑稽《こっけい》だな。いかにもあなたらしい滑稽だ。そうしてあなたはちっともその滑稽なところに気がついていないんだ」
 重そうに籃《かご》を提《さ》げている清子の様子を見た津田は、ほとんどこう云いたくなった。

        百八十四

 すると清子はその籃《かご》をすぐ下女に渡した。下女はどうしていいか解《わか》らないので、器械的に手を出してそれを受取ったなり、黙っていた
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