いが、それはそれ、これはこれであった。二つのものを結びつけて矛盾なく考えようとする時、悩乱は始めて起るので、離して眺めれば、甲が事実であったごとく、乙もやッぱり本当でなければならなかった。
「あの緩《のろ》い人はなぜ飛行機へ乗った。彼はなぜ宙返りを打った」
疑いはまさしくそこに宿るべきはずであった。けれども疑おうが疑うまいが、事実はついに事実だから、けっしてそれ自身に消滅するものでなかった。
反逆者の清子は、忠実なお延よりこの点において仕合せであった。もし津田が室《へや》に入って来た時、彼の気合を抜いて、間《ま》の合わない時分に、わざと縁側の隅《すみ》から顔を出したものが、清子でなくって、お延だったなら、それに対する津田の反応ははたしてどうだろう。
「また何か細工をするな」
彼はすぐこう思うに違なかった。ところがお延でなくって、清子によって同じ所作《しょさ》が演ぜられたとなると結果は全然別になった。
「相変らず緩漫だな」
緩漫と思い込んだあげく、現に眼覚《めざま》しい早技《はやわざ》で取って投げられていながら、津田はこう評するよりほかに仕方がなかった。
その上清子はただ間《ま
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