本の子供の一《はじめ》だの、その一の学校友達という連想から、また自分の親戚《みうち》の方へ逆戻りをして、甥《おい》の真事《まこと》だの、いろいろな名がたくさん並べられた。初手《しょて》から気がついていながら、最後まで名を書かなかったのは小林だけであった。他《ほか》の意味は別として、ただ在所《ありか》を嗅《か》ぎつけられるという恐れから、津田はどうしてもこの旅行先を彼に知らせたくなかったのである。その小林は不日《ふじつ》朝鮮へ行くべき人であった。無検束をもって自《みずか》ら任ずる彼は、海を渡る覚悟ですでにもう汽車に揺られているかも知れなかった。同時に不規律な彼はまた出立と公言した日が来ても動かずにいないとも限らなかった。絵端書を見て、(もし津田がそれを出すとすると、)すぐここへやって来ないという事はけっして断言できなかった。
津田は陰晴定めなき天気を相手にして戦うように厄介《やっかい》なこの友達、もっと適切にいうとこの敵、の事を考えて、思わず肩を峙《そば》だてた。するといったん緒口《いとくち》の開《あ》いた想像の光景《シーン》はそこでとまらなかった。彼を拉《らっ》してずんずん先へ進んだ
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