や正月になったら大変だろう」
「いっぱいになるとどうしても百三四十人は入りますからね」
津田の意味をよく了解しなかったらしい下女は、ただ自分達の最も多忙を極《きわ》めなければならない季節に、この家《うち》へ入《い》り込《こ》んでくる客の人数《にんず》を挙げた。
百八十一
食後の津田は床《とこ》の脇《わき》に置かれた小机の前に向った。下女に頼んで取り寄せた絵端書へ一口ずつ文句を書き足して、その表へ名宛《なあて》を記《しる》した。お延へ一枚、藤井の叔父へ一枚、吉川夫人へ一枚、それで必要な分は済んでしまったのに、下女の持って来た絵端書はまだ幾枚も余っていた。
彼は漫然と万年筆を手にしたまま、不動の滝《たき》だの、ルナ公園《パーク》だのと、山里に似合わない変な題を付けた地方的の景色をぼんやり眺めた。それからまた印気《インキ》を走らせた。今度はお秀の夫と京都にいる両親|宛《あて》の分がまたたく間《ま》に出来上った。こう書き出して見ると、ついでだからという気も手伝って、ありたけの絵端書をみんな使ってしまわないと義理が悪いようにも思われた。最初は考えていなかった岡本だの、岡
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