か」
「いいや、おおかたそうだろうと思っただけさ」
「よく当りましたね。ちとお遊びにいらっしゃいまし、旦那も奥さんも面白い方です。退屈だ退屈だって毎日困ってらっしゃるんです」
「よっぽど長くいるのかい」
「ええもう十日ばかりになるでしょう」
「あれだね、義太夫をやるってえのは」
「ええ、よく御存じですね、もうお聴《き》きになりましたか」
「まだだよ。ただ勝さんに教わっただけだ」
 彼が聴くがままに、二人についての知識を惜気《おしげ》もなく供給した下女は、それでも分も心得ていた。急所へ来るとわざと津田の問を外《はず》した。
「時にあの女の人はいったい何だね」
「奥さんですよ」
「本当の奥さんかね」
「ええ、本当の奥さんでしょう」と云った彼女は笑い出した。「まさか嘘《うそ》の奥さんてのもないでしょう、なぜですか」
「なぜって、素人《しろうと》にしちゃあんまり粋過《いきす》ぎるじゃないか」
 下女は答える代りに、突然清子を引合《ひきあい》に出した。
「もう一人奥にいらっしゃる奥さんの方がお人柄《ひとがら》です」
 間取《まどり》の関係から云って、清子の室《へや》は津田の後《うしろ》、二人づれ
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