いと彼は考えた。
 彼が銜《くわ》え楊枝《ようじ》のまま懐手《ふところで》をして敷居の上にぼんやり立っていると、先刻《さっき》から高箒《たかぼうき》で庭の落葉を掃《は》いていた男が、彼の傍《そば》へ寄って来て丁寧に挨拶《あいさつ》をした。
「お早う、昨夜《さくや》はお疲れさまで」
「君だったかね、昨夕《ゆうべ》馬車へ乗ってここまでいっしょに来てくれたのは」
「へえ、お邪魔様で」
「なるほど君の云った通り閑静だね。そうしてむやみに広い家《うち》だね」
「いえ、御覧の通り平地《ひらち》の乏しい所でげすから、地ならしをしてはその上へ建て建てして、家が幾段にもなっておりますので、――廊下だけは仰せの通りむやみに広くって長いかも知れません」
「道理で。昨夕僕は風呂場へ行った帰りに迷児《まいご》になって弱ったよ」
「はあ、そりゃ」
 二人がこんな会話を取り換《か》わせている間に、庭続の小山の上から男と女がこれも二人づれで下りて来た。黄葉《こうよう》と枯枝の隙間《すきま》を動いてくる彼らの路《みち》は、稲妻形《いなずまがた》に林の裡《うち》を抜けられるように、また比較的急な勾配《こうばい》を楽に上《
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