可思議より、まだ幾倍かの不可思議をもっているかも知れないのだよ。過去の不可思議を解くために、自分の思い通りのものを未来に要求して、今の自由を放《ほう》り出そうとするお前は、馬鹿かな利巧《りこう》かな」
津田は馬鹿とも利巧とも判断する訳に行かなかった。万事が結果いかんできめられようという矢先に、その結果を疑がい出した日には、手も足も動かせなくなるのは自然の理であった。
彼には最初から三つの途《みち》があった。そうして三つよりほかに彼の途はなかった。第一はいつまでも煮え切らない代りに、今の自由を失わない事、第二は馬鹿になっても構わないで進んで行く事、第三すなわち彼の目指《めざ》すところは、馬鹿にならないで自分の満足の行くような解決を得る事。
この三カ条のうち彼はただ第三だけを目的にして東京を立った。ところが汽車に揺られ、馬車に揺られ、山の空気に冷やされ、煙《けむ》の出る湯壺《ゆつぼ》に漬けられ、いよいよ目的の人は眼前にいるという事実が分り、目的の主意は明日《あした》からでも実行に取りかかれるという間際《まぎわ》になって、急に第一が顔を出した。すると第二もいつの間《ま》にか、微笑して彼
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