なさま》はどこかお悪いんですか」
「うん、少し悪いんだ」
下女が去った後《あと》の津田は、しばらくの間、「本当に療治の目的で来た客」といった彼女の言葉を忘れる事ができなかった。
「おれははたしてそういう種類の客なんだろうか」
彼は自分をそう思いたくもあり、またそう思いたくもなかった。どっち本位《ほんい》で来たのか、それは彼の心がよく承知していた。けれども雨を凌《しの》いでここまで来た彼には、まだ商量《しょうりょう》の隙間《すきま》があった。躊躇《ちゅうちょ》があった。幾分の余裕が残っていた。そうしてその余裕が彼に教えた。
「今のうちならまだどうでもできる。本当に療治の目的で来た客になろうと思えばなれる。なろうとなるまいと今のお前は自由だ。自由はどこまで行っても幸福なものだ。その代りどこまで行っても片づかないものだ、だから物足りないものだ。それでお前はその自由を放《ほう》り出そうとするのか。では自由を失った暁《あかつき》に、お前は何物を確《しか》と手に入れる事ができるのか。それをお前は知っているのか。御前の未来はまだ現前《げんぜん》しないのだよ。お前の過去にあった一条《ひとすじ》の不
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