》いたいな」
「お湯にいらっしゃる時、この室《へや》の横をお通りになりますから、御覧になりたければ、いつでも――」
「拝見できるのか、そいつはありがたい」
津田は女のいる方角だけ教わって、膳《ぜん》を下げさせた。
百七十三
寝る前に一風呂浴びるつもりで、下女に案内を頼んだ時、津田は始めて先刻《さっき》彼女から聴《き》かされたこの家の広さに気がついた。意外な廊下を曲ったり、思いも寄らない階子段《はしごだん》を降りたりして、目的の湯壺《ゆつぼ》を眼の前に見出《みいだ》した彼は、実際一人で自分の座敷へ帰れるだろうかと疑った。
風呂場は板と硝子戸《ガラスど》でいくつにか仕切られていた。左右に三つずつ向う合せに並んでいる小型な浴槽《よくそう》のほかに、一つ離れて大きいのは、普通の洗湯に比べて倍以上の尺があった。
「これが一番大きくって心持がいいでしょう」と云った下女は、津田のために擦《すり》硝子の篏《はま》った戸をがらがらと開けてくれた。中には誰もいなかった。湯気が籠《こも》るのを防ぐためか、座敷で云えば欄間《らんま》と云ったような部分にも、やはり硝子戸の設けがあって、
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