、僕がペンを持っていると、そんなにして書いたものはいったいどうなるの、なんて当擦《あてこす》りを云います。新聞の職業案内欄に出ている「事務員募集」の広告を突きつけて謎《なぞ》をかけたりします。
こういう事が繰り返されて見ると、僕は何しにここへ来たんだか、まるで訳が解らなくなるだけです。僕は変に考えさせられるのです。全く形をなさないこの家の奇怪な生活と、変幻|窮《きわま》りなきこの妙な家庭の内情が、朝から晩まで恐ろしい夢でも見ているような気分になって、僕の頭に祟《たた》ってくるんです。それを他《ひと》に話したって、とうてい通じっこないと思うと、世界のうちで自分だけが魔に取り巻かれているとしか考えられないので、なお心細くなるのです、そうして時々は気が狂いそうになるのです。というよりももう気が狂っているのではないかしらと疑がい出すと、たまらなく恐《こわ》くなって来るのです。土の牢の中で苦しんでいる僕には、日光がないばかりか、もう手も足もないような気がします。何となれば、手を挙げても足を動かしても、四方は真黒だからです。いくら訴えても、厚い冷たい壁が僕の声を遮《さえ》ぎって世の中へ聴えさせな
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