いようにするからです。今の僕は天下にたった一人です。友達はないのです。あっても無いと同じ事なのです。幽霊のような僕の心境に触れてくれる事のできる頭脳をもったものは、有るべきはずがないからです。僕は苦しさの余りにこの手紙を書きました。救を求めるために書いたのではありません。僕はあなたの境遇を知っています。物質上の補助、そんなものをあなたの方角から受け取る気は毛頭ないのです。ただこの苦痛の幾分が、あなたの脈管《みゃくかん》の中に流れている人情の血潮に伝わって、そこに同情の波を少しでも立ててくれる事ができるなら、僕はそれで満足です。僕はそれによって、僕がまだ人間の一員として社会に存在しているという確証を握る事ができるからです。この悪魔の重囲の中から、広々した人間の中へ届く光線は一縷《いちる》もないのでしょうか。僕は今それさえ疑っているのです。そうして僕はあなたから返事が来るか来ないかで、その疑いを決したいのです」
手紙はここで終っていた。
百六十五
その時|先刻《さっき》火を点《つ》けて吸い始めた巻煙草《まきたばこ》の灰が、いつの間にか一寸近くの長さになって、ぽたりと
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