その何処《いずこ》にも興味を見出《みい》だし得なかった彼は、会談の圏外《けんがい》へ放逐《ほうちく》されるまでもなく、自分から埒《らち》を脱《ぬ》け出したと同じ事であった。これだけでも一通り以上の退屈である上に、津田は厭《いや》がらせる積極的なものがまだ一つあった。彼は自分の眼前に見るこの二人、ことに小林を、むやみに新らしい芸術をふり廻したがる半可通《はんかつう》として、最初から取扱っていた。彼はこの偏見《プレジュジス》の上へ、乙《おつ》に識者ぶる彼らの態度を追加して眺めた。この点において無知な津田を羨《うら》やましがらせるのが、ほとんど二人の目的ででもあるように見え出した時、彼は無理にいったん落ちつけた腰をまた浮かしにかかった。すると小林がまた抑留した。
「もう直《じき》だ、いっしょに行くよ、少し待ってろ」
「いやあんまり遅くなるから……」
「何もそんなに他《ひと》に恥を掻かせなくってもよかろう。それとも原君が食っちまうまで待ってると、紳士の体面に関わるとでも云うのか」
 原は刻んだサラドをハムの上へ載せて、それを肉叉《フォーク》で突き差した手を止《や》めた。
「どうぞお構いなく」

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