を聴いたって仕方がないと思っているところへ後が来た。
「それでどうだ。僕は始終《しじゅう》君に軽蔑《けいべつ》される、君ばかりじゃない、君の細君からも、誰からも軽蔑される。――いや待ちたまえまだいう事があるんだ。――それは事実さ、君も承知、僕も承知の事実さ。すべて先刻《さっき》云った通りさ。だが君にも君の細君にもまだ解らない事がここに一つあるんだ。もちろん今さらそれを君に話したってお互いの位地《いち》が変る訳でもないんだから仕方がないようなものの、これから朝鮮へ行けば、僕はもう生きて再び君に会う折がないかも知れないから……」
 小林はここまで来て少し昂奮《こうふん》したような気色《けしき》を見せたが、すぐその後から「いや僕の事だから、行って見ると朝鮮も案外なので、厭《いや》になってまたすぐ帰って来ないとも限らないが」と正直なところを付け加えたので、津田は思わず笑い出してしまった。小林自身もいったん頓挫《とんざ》してからまた出直した。
「まあ未来の生活上君の参考にならないとも限らないから聴きたまえ。実を云うと、君が僕を軽蔑している通りに、僕も君を軽蔑しているんだ」
「そりゃ解ってるよ」

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